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第三話 始まりの季節、惹かれ合う心

ผู้เขียน: 桜 こころ🌸
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-17 21:17:41

【二〇一五年 杏】

 あれは、私が十六歳の時のこと。

 また話はそこへ戻る。

 あの朝、私は校門の前で佇むあなたを見た。

 そこからすべてが始まった。

 月ヶ瀬(つきがせ)修司(しゅうじ)に出会ったのは、十年前の春のこと。

 修司は転校生だった。

 あの時、校門の前にいた彼が、まさか今日から私のクラスメイトになるなんて思いもしなかった。

 高校に進学してから、まだ一か月。

 クラスにはまだ馴染めていない子もいる。そんな中、さらに転校生が加わるというのだから、教室は騒然としていた。

 ガラガラと教室の扉が開き、先生に連れられて修司が入ってくる。

 その瞬間、私は息をのんだ。

 あの人だ。

 黒髪を少し無造作に流した端正な顔立ち。

 凛とした佇まいと、どこか物憂げな雰囲気。

 私は瞬きするのも忘れ、彼を見つめる。

 その視線に気づいたのか、修司がこちらに視線を向けた。

 ――目が合う。

 トクン……鼓動が跳ねる。

 彼がふっと笑う。

 私は恥ずかしくて急いで視線を逸らした。

 ドクンドクン……。

 まだ私の心臓は激しい音を奏でていた。

 転校生の登場に、クラスはさらにざわめき出す。

 自己紹介を済ませた修司は、空いていた席に腰を下ろした。

 こうして、修司はクラスの一員となった。

 授業が終わると、すぐに修司のまわりには人が集まった。

「どこから来たの?」

「趣味は?」

「部活は入るの?」

 転校生への通過儀礼というか、恒例行事というか。

 いつの時代も、転校生というものは質問攻めにされるものだ。

 私は、その輪の外から彼を眺めていた。

 本当は私も話しかけたかった。

 でも、そんな勇気もなく……。

 彼の姿を見ているだけでも、こんなに胸がざわめくのに。

 話しかけるなんて。

 まあ、外見もイケてるし、人当たりもいい。

 笑顔が素敵だし……モテるんだろうなあ。

 結局、私は話しかけることができず、ただ遠くから見つめることしかできなかった。

 しかし、そんな私にも幸運の女神が微笑んだ。

 放課後。

 いつものように、一人で帰り道を歩いていた。

 今日の夕飯は何にしようかな、なんて考えながら。

「ねえ、一緒に帰ろう」

 突然、背後から声をかけられ、振り返る。

 そこにいたのは——月ヶ瀬修司。

 にっこりと微笑む修司を目の前に、私は呆然と立ち尽くした。

 え、なんで?

 だって、私は彼と話したこともないのに。

 動揺し、焦りまくる私に、修司は優しく問いかけた。

「ダメ?」

 私は、咄嗟に口を開いた。

「え、あ……う、うん……いいよ」

 速攻で返事した。

 だって、嬉しかった。ずっと話してみたいと思っていたから。

「今朝、ここで会ったよね?」

 その言葉に、私は驚いて修司を見つめる。

 やっぱり気づいていてくれたんだ。

 今朝のホームルームで、私に笑いかけてくれたのは幻じゃなかった。

 私の表情を肯定と受け取ったのか、修司は嬉しそうにコロコロと笑った。

「そっか、やっぱりね。

 ずっと気になってたんだ。すごく可愛い子だなって」

 ドクンッ。

 心臓が大きく跳ねる。

 え、なに? この人、いきなり何言ってるの?

 私、今ナンパされてる?

 それとも、この人って実はめちゃくちゃチャラい、とか?

 疑うように目を細めると、修司は慌てた様子で顔の前で手を振った。

「ちがうよ! ナンパとかじゃない。

 本当に、可愛いって思ったんだ。嘘じゃない」

 まっすぐな瞳で見つめられる。

 その瞳は澄んでいて、軽い気持ちでこんなことを言うようには見えなかった。

 それに、私はもう彼のことが……。

「これからよろしくね。……えーと」

 修司は手を差し出しながら、言葉を濁す。

 ああ、そっか。

 そういえば、まだ自己紹介してなかった。

「私、佐原杏。よろしく」

 私は差し出された手を、そっと握り返した。

 それから、私たちはいつも一緒にいるようになった。

 帰り道も途中まで同じだから、毎日並んで帰る。

 朝は二人の共通の十字路で待ち合わせして一緒に登校。

 休み時間も常に一緒で、お昼も当然のように並んで食べた。

 校内では、すでに「二人は付き合っている」という噂が立つほど、私たちは仲が良かった。

 でも、本当のところ、まだ付き合ってはいない。

 私自身、たまに「どうなのかな?」と思うことはあったけれど、彼の気持ちがわからなくて、告白する勇気が出なかった。

 そして、季節は流れ、初夏の七月初旬。

 夏が本格的に始まりかけた頃、制服もいつの間にか長袖から半袖へと変わっていた。

 そんなある日の帰り道。

 いつもの明るい修司が、今日はなぜか静かだった。

 時折、寂しそうな顔をしたり、小さくため息をついたりしている。

 彼がこんなふうに沈んでいるのは、とても珍しい。

「どうしたの? 今日は元気ないね」

 私がそう問いかけると、修司は頷きながら俯いた。

「うーん、ちょっと家族のことでね」

 気まずそうに目を逸らす。

 あまり話したくないことなのかもしれない。

「もし話したくなったら言ってね。悩みくらいなら聞くよ。

 あんまりいいアドバイスとかはできないけど」

 笑いかけると、修司は少し考え込むように視線を落とした。

「悩みなんて、格好悪いだろ?」

「そんなことない! それに、修司の役に立てるなら嬉しいよ。

 悩みがあるなら聞く。話すと、楽になることもあると思うし」

 私はまっすぐに想いを込めて、修司を見つめた。

 すると、彼はふっと頬を緩め、優しい顔つきになった。

「そっか、そうだね。……ありがとう、杏」

 ニコッと笑った彼の顔が可愛くて、胸がときめいた。

 こうして、私たちは静かに話せる場所を求め、公園へと足を向けた。

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